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パトリック・モディアノ『暗いブティック通り』 

 読んで面白いと思った本のことを書きます。
(この本は同作者の小説における特徴から書かないと伝わり辛いので、そこから書きます)

パトリック・モディアノ『暗いブティック通り』 白水社  訳:平岡篤頼

 モディアノの小説は3冊しか読んでいないのですが、受け取り方がとても難しいです。
 読者に読み取らせようとする範囲がとても広いのです。

 モディアノの小説に出てくる主人公には、初めから「思いだせない過去(あるいは、過去でわからないこと)」があります。
 それは亡くなった筈の母親のことだったり、両親や同居人のことだったり、恋人だったり、あるいは自分の名前だったり、自分に関わる殆どのことです。その「謎」に引き込まれるように、主人公は人を訪ねたり、調べ物をしたりと行動に出ていきます――それが話の主軸です。
 ところが、この「謎」は大抵最後まで明かされません。私のように「どういう過去なんだろう?」と受身でページを繰っていくだけでは、「謎」の露ほどもわからずに終わります。私は最初にモディアノの小説を読んだとき、まるで推理小説を読んでいる気分でいたため、読み終えた後で釈然としないものを感じました。
 しかし、モディアノの小説はそもそも推理小説ではありません。純文学だと思って読むと、途端に面白くなります。純文学小説においては、計算式で導かれたような明確な答えなど要らないからです。
 そして3冊の中で一番心惹かれた小説が『暗いブティック通り』でした。この本でも、主人公は自分の過去を忘れています。

 モディアノの小説は「謎」が明かされないと書きましたが、ドイツ占領下におけるフランスが舞台だと意識すると、おぼろげながら話が見えてくるようになっています。(逆にこれを意識しないと話が全く掴めません)

 モディアノの小説を読んでいると、カンバスに描かれた絵を想像します。透明感のある、けれどもどこか陰鬱な雰囲気がある抽象画で、カンバスをガリガリ削ると別の絵が現れます。ナチスに翻弄される人々(ユダヤ人)です。このストレートな絵こそ、物語を包み込んでいる陰鬱さの原因ですが、抽象画に隠れて表立っては出てこないのです。物語を理解するには読者が自分の手でカンバスを削っていかなければなりませんが、読者の気分次第で2つの絵の混ざり具合を楽しむことも、あるいは抽象画だけを味わうことも出来ます。

 この本は同作者の『さびしい宝石』などと比べてもわかりやすいですし、日本語訳も好きです。特に会話でカギカッコを使用しないところが、主人公の透明感と浮遊感を高めるのに一役買っていると思います。読んでいる間に、何度、先を急ごうとする心を落ち着かせたことか。おすすめです。ゴンクール賞を受賞した小説でもあります。

 ちなみに、本の帯を見ると『暗いブティック通り』は『冬のソナタ』の脚本家が影響を受けた小説だそうです。『冬のソナタ』も観たことはありますが、記憶喪失の部分以外は似ていないと思います。でもそういう入り方もありだと思うので、『冬のソナタ』が好きな人にもおすすめです。
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読書メモ『タルチュフ(もしくはペテン師)』

モリエール 『タルチュフ (もしくはペテン師)』 岩波文庫

[勝手なあらすじ]
 タルチュフはキリスト教の“偽”信者。敬虔な信者を騙って他の信者から金銭をだまし取るロクでもない男だが、口だけは上手くなかなか尻尾を出さない。

 素直で単純なオルゴンは見事に騙され、タルチュフを素晴らしい人間だと勘違いしてしまう。タルチュフに金銭的な援助をするだけでは飽き足らず、自分の財産と娘まであげようとする。タルチュフの本性を見抜いている家族たちからすれば「とんでもない話だ!」

 家族と使用人は幾度もオルゴンに「あいつはペテン師だ」と説得して来たが、徒労に終わっていた。それどころか、説得すればするほど逆効果になってしまう。おまけにオルゴンはなるべく早く娘をタルチュフに嫁がせたいらしい。冗談じゃない!
 こうなったら最後の手段、オルゴンとタルチュフの前で一芝居打つしかないだろう……。
[勝手なあらすじ終わり]


 面白かったー!

 タルチュフ、口が上手すぎる。そして図太い。普通なら「これはもう白状するしかないでしょう」というペテン師たる事実を暴かれても、のうのうと煙にまいてしまう。それに騙されるオルゴン。言い訳出来ないような窮地に立たされていた筈のタルチュフなのに、いつの間にかますます尊敬されている。この綺麗な流れに笑った。

 この話には良い味を出している登場人物が複数いるけども、一番は娘の使用人のドリーヌだと思う。「本当に使用人か?」と言いたくなるくらい毒舌で、目上の人間に対しても容赦しない。
 例えば、オルゴンが娘に「今の婚約者とは別れてタルチュフと結婚しなさい」と言ったときのドリーヌの台詞はこうだ。
「おやおや! 顔のまんなかに大きなひげを生やした分別くさそうなかたが、きっと気でも狂ったんでしょうね」
 陰口ではない。オルゴンの目の前で言ったのだ。これに限らずドリーヌとオルゴンの会話は面白い。

 オルゴンの妻・エルミールも良かった。タルチュフとオルゴンの前で一芝居打っているときの彼女がする、ある仕草が笑える。策士だけども純情で、とっても可愛い。

 ワガママを言えば一ヶ所だけ不満があるものの、全体的に面白かったし、値段も手頃。読後感も良かった。

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読書メモ『眠れなくなる夢十夜』

 久々の読書メモ。これは今年の夏に読んだものなので、記憶が曖昧になっていますが……。

 小説新潮編集部編『眠れなくなる夢十夜』
[収録作品:阿刀田高“夢一夜” あさのあつこ“厭だ厭だ” 西加奈子“鳥” 荻原浩“長い長い石段の先” 北村薫“指” 谷村志穂“こっちへおいで” 野中柊“柘榴のある風景” 道尾秀介“盲蛾” 小池真理子“翼” 小路幸也“輝子の恋”]

 夏目漱石の『夢十夜』をモチーフにしたアンソロジー。
 恥ずかしながら私は夏目漱石の小説に馴染みが薄く、『夢十夜』に関しても一夜目を曖昧に記憶しているだけであとは忘れてしまいました。この本も最初と最後の作品のモチーフを思いつく程度です。おそらく夏目漱石が好きな方ならニヤリとさせられる話もあるのでしょうが……。
 以下は単純に独立した話として読んだ感想になります。

 話によって、面白いものやそうでないものとの差が大きいように感じました。しかし、この評価は読み手によって大きく左右されそうで、裏を返せば誰が読んでも大体一つは好みの話が見つけられる……とも言えます。やっぱり短編小説って良いですね!

 私が面白いと感じたものは“盲蛾”“柘榴のある風景”“指”
 “柘榴のある風景”は内容が楽しく、“指”は文体や雰囲気が好みでした。まるで白昼夢のよう。北村薫氏は名前しか知らなかったのですが(雑誌で一度だけ読んだ記憶もあるような……)他の小説も読んでみたくなりました。
 そして“盲蛾”。タイトルの『眠れなくなる~』に合っている内容で、汚らわしくも美しく、最後はまるで一枚の絵のよう。祭りのシーンも日本的な怖さがあり、現実的に考えればひどい主人公の「稼いだ金の行方」には幻想的な雰囲気が溢れていて良かったです。

 不満な点を挙げるなら『眠れなくなる~』というタイトルや、帯の「早く朝になってくれ」というあおり文。あてはまりそうな話は一編だけで、他はどんなに怖がりの人が読んでも平気でしょう。私は帯やタイトルから幻想怪奇小説を期待していたので、そこが少し残念でした。

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読書メモ『病は気から』

モリエール 『病は気から』 岩波文庫

[勝手なあらすじ]
 健康体なのに自分を病人だと思い込んでいる男、アルガン。彼は頑固だが人の言うことを信じやすい性格で、医者たちから良いように食い物にされている。
 しかし治療にはお金がかかって仕方ない。アルガンは、自分の体をタダで診てもらうために、娘を医者に嫁がせようと考える。
 ところが娘には相思相愛の男がいた。娘もアルガンも自分の希望を譲らない。
 そこで女中のトワネットが一肌脱ぐことにした。アルガンの“エセ治療”料金問題を解決して、娘を好きな男と一緒にさせるために――ついでにアルガンの後妻の本心も暴いておこう――大きな芝居を打つことにしたのだ。


 ↑何だか変なあらすじになりました。ちょっとニュアンスが違うかも。
 『いやいやながら医者にされ』よりも、当時の医者に対する風刺が強いように感じました。やりすぎていて戸惑うくらいです。
 が、トワネットのふてぶてしく軽快なテンポで繰り返される発言の数々は読み手を愉快な気持ちにさせてくれます。「ただの善人」でないところが良いです。
 歌のシーンも多く設けられていることを考えると、舞台で観る分には面白いかなという気がします。戯曲ですし

 短いお話で、すぐに読み終えられます。読後感も悪くありません。ただその条件なら『いやいやながら医者にされ』の方がおすすめ出来ると思いました。

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読書メモ『さあ、気ちがいになりなさい』

 フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』 早川書房
[収録作品:“みどりの星へ” “ぶっそうなやつら” “おそるべき坊や” “電獣ヴァヴェリ” “ノック” “ユーディの原理” “シリウス・ゼロ” “町を求む” “帽子の手品” “不死鳥への手紙” “沈黙と叫び” “さあ、気ちがいになりなさい”〕

 私の好きな作家、星新一が訳をしていたので選んだのですが――十月に購入した六冊の中で一番面白い本でした。表題作のみで言えばマルセル・エイメの『壁抜け男』なんですが、こちらは話に当たり外れがないんです。

 地球最後の男のいる部屋のドアがノックされるシーンで始まる“ノック”や、誰もいない森で木が倒れたらその音は存在するのか否かという昔からの議論を膨らせた“沈黙と叫び”など、話の上手さに唸らされます。(“沈黙と叫び”は以前にも読んだことがあるというのに)。
 表題作を含めて全てが一定基準以上のレベルにあり、各人の好みによってどれが好きか変わると思いますが、私の一番は“電獣ヴァヴェリ”です。心にジンと来る読後感がたまりません。
 簡潔で癖のない星氏の文体もよく似合っています。「翻訳ものって、文章がまだるっこしい」という私のような人に薦めたくなるような本です。

 ですが非常に残念な点が二つあります。
 それは解説。
 一つは、「解説の方が、表題作のオチをバラしてしまっている」こと。
 一応伏せられている所もあるものの、読み手が一番知りたがっていたことは明確に書かれていて、推理小説に例えるなら「犯人はAだよ。トリックは内緒だけど」というレベルです。隠している意味がありません。
 二つ目は「この本に収録されていない、ブラウンの別の小説のオチもバラしている」ことです。
 一つ目のことはまだともかく、どうして収録されていない作品のオチまで書いてしまうのでしょうか。ネタばらしされることで興味のわくものと、そうでないものとがありますが、こちらは完全に後者でした。
 「ここには載っていないけど、こうこうこういう話もあって、それが凄く面白いんだよ」くらいの紹介なら、ブラウンに興味を持った一読者として嬉しかったのに――残念です。
 解説は読まないことをお勧めします。
(※解説の最初の文を見るに、復刊後の方のみのようです)

 本自体は本当にお薦めです。

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 何故か読み終わる寸前まで、ダールと勘違いしていました。
 ……名前が混ざるんです。

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Author:sano
 2008年から小型水槽と共に暮らしています。
 好きな水草はアナカリスとマツモ。
 このブログには、私が飼っている小型魚の写真を載せています。見て行って下さいね♪

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